アク抜きを成功させるためのファーストステップは、鍋に火をかける前の下ごしらえに集約されます。泥をきれいに洗い流した後、決して皮をすべて剥いてはいけません。筍の皮には亜硫酸塩類をはじめとする組織軟化成分が含まれており、皮をまとったまま茹でることで、身の水分を保ちながらしっとりと均一に火を通す天然の圧力室が形成されます。
包丁を入れる際は、まず穂先を斜めにスパッと3〜4センチほど切り落とします。続いて、切り口から根元に向かって皮の厚みの半分程度まで縦にスーッと1本切れ目を入れる筍の皮むきと隠し包丁の入れ方が極めて重要です。この一本の切れ目が、茹で上がった後の驚くほどスムーズな皮むきを可能にするだけでなく、内部に熱対流とアク抜き成分を効率的に行き渡らせるバイパスとなります。
鍋の選定と筍の茹で時間と冷まし方にも妥協は許されません。筍が水面から顔を出さない深鍋を用意し、落とし蓋(落とし紙)をして弱火でコトコトと煮込みます。竹串が根元の最も太い部分にスッと抵抗なく通るまで、小ぶりなもので40分、大型のもので60〜80分が基準加熱時間です。
そして、最も多くの一般家庭が致命的なミスを犯すのが「火を止めた直後の扱い」です。茹で上がった熱い筍をすぐに流水にさらしたり、皮を剥いて冷水に浸けたりすると、急激な熱収縮によって組織が締まり、外に溶け出しかけていたえぐみ成分が再び内部に閉じ込められてしまいます。火を止めたら鍋ごと常温で半日(最低でも6〜8時間)かけて完全に冷まし切る。この徐冷プロセスこそが、結合型のアクを完全に遊離させ、繊維を極上の食感へと落ち着かせる絶対条件です。