八代さんの人徳は、旅立ちの前後に見られた周囲の行動に如実に表れていました。2024年1月8日の密葬では、長年苦楽を共にした事務所スタッフや関係者だけで静かに見送られました。そこには「ファンに弱った姿を見せたくない」「最期まで希望を届ける存在でありたい」という本人の強いプライドが反映されていたと伝えられています。
公の場としての別れは、2024年3月26日に東京・大田区の片柳アリーナで開催された「八代亜紀 お別れの会 ~ありがとう・・・ずっと歌い続けて~」でした。会場には歌手仲間や各界著名人のみならず、一般ファンを含む約3,000人が参列。献花台には彼女のトレードマークであった華やかなドレスと、受賞したトロフィー、そして自ら描いた油彩画が飾られました。
特に印象的だったのは、全国から駆けつけたトラック運転手たちの姿です。八代さんはかつて映画『トラック野郎』への出演を機に、長距離ドライバーたちの「女神」として絶大な支持を集めました。東日本大震災や熊本地震の際には、誰よりも早く現地に駆けつけ、避難所の冷たい床の上でマイクを握り続けた現場主義の姿勢。お別れの会に参列した人々が口々に語ったのは、「スターぶらない気さくさ」と「困っている人に真っ先に手を差し伸べる優しさ」でした。
また、プライベートで長年連れ添った元夫であり元所属事務所社長の増田登氏との関係性も注目されました。二人は2021年1月に27年間の婚姻関係を解消(協議離婚)していましたが、離婚後もビジネスパートナーおよび友人として互いに敬意を払い続けていました。私情を越えてプロフェッショナルとして支え合った人間関係の成熟さも、八代亜紀という人物の器の大きさを物語っています。