ネット上のコミュニティやSNSでは、今なお『雨の御堂筋』に関するいくつかの誤解や憶測が散見されます。音楽史的証拠に基づき、代表的な2つのポイントを検証します。
誤解1:最初から欧陽菲菲のために書き下ろされた演歌・歌謡曲である?
これは事実と異なります。前述の通り、本作はベンチャーズが作曲したインストゥルメンタル『Stranger in Midosuji』がベースです。当初から歌謡曲として企画されたのではなく、サーフロック・インストの巨匠が作ったメロディラインを日本の制作陣が見出し、川口真氏の卓越したストリングス&ブラスアレンジによって都会的なソウル・ポップスへと昇華させたものです。
誤解2:心斎橋から本町・梅田へのルートは地理的に不自然?
「南から北へ歩くのは逆走ではないか」という議論がネット上で時折見られます。しかし、これは作詞家・林春生氏の計算された演出です。歓楽街(心斎橋)での別れから、夜間に静まり返るオフィス街(本町)、そして交通の拠点である梅田へと向かう移動は、現実逃避と絶望的な探索のグラデーションを見事に表現しています。単なる道順のトレースではなく、心の動線を緻密にトレースした構成です。