沖縄の初夏を告げる風物詩として有名な「ハーリー」と、近年海を舞台に盛り上がりを見せる「ドラゴンボート」。一見すると同じように見えるこの2つですが、取材を進めるとそのルーツと運用思想には決定的な違いが存在します。
沖縄伝統行事ハーリー歴史を紐解くと、その起源は約600年前の琉球王国時代、中国(明)から伝来した「爬竜船(はりゅうせん)」にさかのぼります。旧暦5月4日(ユッカヌヒー)を中心に各地の漁港で行われるハーリーは、航海安全と豊漁を神に祈願する「神事・祭祀」としての性格を色濃く残しています。使用される船は伝統的な木造船「サバニ」を進化させたもので、伝統衣装に身を包んだ漕ぎ手たちが独特の掛け声とともに漕ぎ進みます。
一方で、世界的な広がりを持つ「ドラゴンボート」は、国際ドラゴンボート連盟(IDBF)などの厳密なレギュレーションに基づいた国際規格マリンスポーツです。艇体はFRP(強化プラスチック)で統一され、太鼓手(ドラマー)1名、舵手(ステアラー)1名、漕手(パドラー)10〜20名が乗艇し、タイムや着順を純粋なアスリート精神で競い合います。
「伝統の神聖な儀礼を守り継ぐハーリー」と、「国内外の誰もがオープンに参加できるスポーツ競技としてのドラゴンボート」。この2つのカルチャーが豊かに共存・融合している点こそが、沖縄の海が持つ唯一無二の魅力といえます。