本作の物語は、東京都内の家電メーカーに勤務していた28歳のOL・大島凪が、同僚の顔色をうかがい「場の空気」に押し潰されそうになっていた日常をすべて捨て去ることから始まります。交際相手の心無い言葉をきっかけに過呼吸で倒れた彼女は、仕事を辞め、都内の住まいを引き払い、携帯電話すら解約。東京・立川の何もないボロアパートに引っ越し、人生のリセットを図ります。
物語の軸となるのは、凪を中心とした奇妙でいびつな人間関係です。凪の元カレである我聞慎二は、外面は完璧なエリート営業マンでありながら、凪への屈折した愛情ゆえにモラハラ発言を繰り返し、裏で号泣するという強烈な二面性を抱えています。一方、アパートの隣人でイベントオーガナイザーの安良城ゴンは、出会う女性すべてを骨抜きにして自滅させる「メンヘラ製造機」のような危険な包容力で凪を揺さぶります。
さらにアパートの住民や街の人々が、凪の自立を時に阻み、時に力強く後押しします。母親の顔色を伺いながら自立した生き方を模索する小学生の白石うらら、高学歴ゆえに社会に馴染めず怪しい石のセールスをしていた坂本龍子、そして凪がアルバイトを始めるスナック「バブル」の包容力豊かなママなど、一人ひとりが独自の欠落と温かさを抱えた人物として相関図を形作っています。