視聴者の多くが佐野勇斗の演技に引き込まれる最大の要因は、「徹底的な役への憑依と、人間臭さの同居」にあります。その代表例が、NHK連続テレビ小説『おむすび』で演じた高校球児・四ツ木翔也(ヨン様)役です。高校野球の過酷な練習に打ち込む姿勢を表現するため、徹底した肉体改造と投球フォームの習得に時間を費やし、劇中での所作一つひとつに本物のアスリートとしての説得力を宿らせました。
当時の制作発表やインタビューにおいて、共演者やスタッフからも「現場に入る前の準備量が尋常ではない」と明かされていた通り、台本に書かれていないバックボーンまで身体化する執念が、視聴者の心を揺さぶったのです。ヒロイン・米田結(橋本環奈)をまっすぐに見つめる純朴な眼差しと、野球に挫折しかけながらも立ち上がる泥臭い叫びは、従来の朝ドラヒーロー像に新鮮な活力を吹き込みました。
一方で、TBS系ドラマ『トリリオンゲーム』における平学(ガク)役では、真逆のベクトルで驚異的な適応力を見せつけました。目黒蓮が演じる破天荒なハルに対し、内気でコミュニケーションが苦手ながらも天才的なプログラミング技術を持つガク。佐野勇斗は、視線の泳がせ方、指先の細かな震え、早口になるオタク特有の語り口など、微細な身体言語を駆使してキャラクターのリアリティを構築しました。
豪快な主人公を立てる受動的な演技にとどまらず、物語のクライマックスではハルと対等に渡り合う情熱を爆発させるなど、起伏に富んだ感情曲線を鮮やかに描写。この「受けの芝居」から「攻めの芝居」へのシームレスな移行こそが、批評家筋からも「20代俳優屈指の技術力」と絶賛される所以です。