大手企業の開発トップに上り詰めるほどの敏腕ビジネスマンであった青柳が、なぜ巧妙な地面師詐欺を見抜けず巨額の損失を出してしまったのか。その最大の要因は、「石洋ハウス社内の激しい派閥争いとタイムリミットによる焦り」にありました。
当時の石洋ハウス社内では、会長派と社長派の熾烈な権力闘争が勃発していました。社長派の急先鋒であった青柳は、ライバル派閥を失脚させ自らが常務取締役の座を射止めるため、どうしても社運を賭けたメガプロジェクト「高輪の寺(光庵寺)の隣接地」をまとめ上げる必要があったのです。
地面師チーム(ハリソン山県、辻本拓海ら)は、青柳のこの「出世への執着」と「功名心」を完璧にプロファイリングしていました。他社デベロッパーの影をちらつかせて競争心を煽り、確認プロセスを省略せざるを得ない極限のスケジュールへ追い込むことで、青柳の冷静な判断力を奪い去ったのです。