十全大補湯を服用した方から「朝の起き上がりが劇的に楽になった」「冷え切っていた手足に温もりが戻った」と驚きの声が寄せられる背景には、処方構成の緻密さがあります。漢方の古典『和剤局方(わざいきょくほう)』に収載されて以来、800年以上にわたり受け継がれてきたこの処方は、単なるビタミン剤のような一時的な刺激を与えるものではありません。
東洋医学において、生命活動を支える二大要素が「気(エネルギー・代謝機能)」と「血(血液・全身を潤す栄養物質)」です。過労や加齢、大病などによって気と血の双方が極度に枯渇した状態を「気血両虚(きけつりょうきょ)」と呼びます。十全大補湯は、この状態を根本から立て直すために設計された「気血双補剤(きけつそうほざい)」の最高峰です。
処方の骨格は、気を補う基本薬「四君子湯(人参・白朮・茯苓・甘草)」と、血を補う「四物湯(当帰・川芎・芍薬・地黄)」の合剤です。これに、体表の防衛力を高め皮膚の血行を促す「黄耆(おうぎ)」と、深部から体を温めて血行を加速させる「肉桂(にっけい)」を加えた計10種類の生薬で構成されています。気・血・温の3要素を同時に補うからこそ、極度の疲労倦怠や深刻な冷え性改善、顔色の悪さを伴う貧血、さらには病後術後の体力低下に対して強力な底上げ効果を発揮します。