処方箋に「フルチカゾンフランカルボン酸エステル点鼻液」と記載されていて戸惑う患者がいますが、これは薬剤の一般名(有効成分名)であり、グラクソ・スミスクライン社が開発した先発品「アラミスト点鼻液」と同一の有効成分です。日本耳鼻咽喉科アレルギー学会が発行する『鼻アレルギー診療ガイドライン』において、中等症から最重症の通年性および季節性アレルギー性鼻炎に対し、点鼻ステロイド薬は第一選択薬として確固たる位置を確立しています。
患者が最も実感するフルチカゾンフランカルボン酸エステルの効果は、飲み薬では解消しにくい「鼻づまり(鼻閉)」に対する強力な寛解作用です。アレルギー反応が起きると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンが放出され、鼻粘膜の血管拡張と浮腫(むくみ)が生じます。抗ヒスタミン内服薬はこの受容体を遮断するにとどまりますが、点鼻ステロイドは細胞核内のグルココルチコイド受容体に直接作用し、炎症性サイトカインの産生そのものを転写レベルで強力にブロックします。その結果、肥大化した鼻粘膜が速やかに縮小し、空気の通り道が劇的に確保されます。
医療現場で「仕事や運転に支障を出したくない」と訴える患者に対し、医師が真っ先に本剤を推す理由が花粉症処方薬特有の眠気リスクの排除です。内服の第1世代・第2世代抗ヒスタミン薬の一部は、血液脳関門を通過して脳内のヒスタミン受容体をブロックするため、中枢抑制作用によって激しい眠気やインペアード・パフォーマンス(集中力低下)を引き起こします。対してフルチカゾンフランカルボン酸エステルは、鼻粘膜局所で作用したのち、血管内に吸収される割合(全身バイオアベイラビリティ)が0.5%未満と極小です。万が一口腔内から飲み込まれた分も、肝臓を通過する際の初回通過効果によって99%以上が即座に代謝・不活化されます。脳の中枢神経系へ到達する薬剤量はゼロに等しいため、眠気や倦怠感を生じさせる薬理的要因が存在しないのです。