2026年は、AIによる自動作曲ツールが極めて身近になり、数秒で整った楽曲が生成できる時代となった。だが、皮肉にもそうした無菌室で作られたような整然とした音楽が増えたことで、人々はより「人間の生々しい感情」や「歪みのある表現」を求めるようになっている。
奥華子が紡ぎ出したこの楽曲は、完璧な理論の上に、彼女自身の声質やキーボードの打鍵の強弱、息遣いまでが密接に結びついて成立している。AIに「感動的なコード進行」を指示すれば似たような和音の並びは出てくるだろう。しかし、行間にあるわずかな間(ま)や、声が裏返るギリギリのコードアタックの切なさは、人間にしか生み出せない。だからこそ、最新技術に囲まれた現代人ほど、この曲の生々しいコードの響きに救いを求めてしまうのだ。