この表現のルーツは、6世紀の中国・南北朝時代を記録した歴史書『北斉書(ほくせいしょ)』の「文宣帝紀(ぶんせんていき)」に記された故事成語にさかのぼります。東魏の実力者であった父・高歓(こうかん)と、のちに北斉の初代皇帝となる次男・高洋(こうよう)の間で交わされた有名な試練のエピソードが語源となっています。
ある日、高歓は成長した息子たちの知略と器量を試すため、全員に固くもつれ合って団子状になった麻糸の束を1つずつ手渡し、「これを綺麗に解いてみせよ」と命じました。
兄や弟たちは糸口を見つけようと指先を動かし、一本一本慎重に解きほぐそうと必死に悪戦苦闘します。しかし、糸は触れば触るほど固く締まり、誰も解くことができません。そのなかで、まだ幼さの残る高洋だけは全く異なる行動を取りました。おもむろに腰の抜き身の刀を引き抜くと、もつれた麻糸の塊を一刀のもとに叩き斬り、こう言い放ったのです。
「乱るる者は斬るべし(乱れているものは、断ち切るのが筋である)」
父の高歓はその大胆不敵な決断力と、固定観念にとらわれない発想の非凡さを大いに賞賛しました。これが「快刀乱麻を断つ」という故事の原点です。西洋におけるアレクサンドロス大王の「ゴルディアスの結び目(Gordian knot)」の逸話と驚くほど構造が一致しており、洋の東西を問わず、混迷を極めた難局では「常識的なアプローチを捨てる勇気」こそが局面を打破する鍵となることを示しています。