隠元禅師が日本にもたらしたものは、仏教の教えだけではない。インゲン豆、スイカ、レンコン、タケノコ(孟宗竹)、そして茶の湯の文化。現代の日本の食卓に欠かせない食材の多くが、この寺を発信源としている事実は意外と知られていない。
その食文化の頂点に立つのが「普茶(ふちゃ)料理」だ。「広く大衆と茶をともにする」という平等の精神から生まれたこの精進料理は、ひとつの円卓を4人で囲み、大皿の料理を取り分けて食べる独特のスタイルをとる。肉や魚を一切使わず、野菜や乾物を驚くほどの手間と技で彩り豊かに仕立てる料理は、まさに現代のプラントベースやヴィーガン思想の先駆けと言える。健康志向とエシカルな価値観が定着した今、この伝統的な食体験を求めて予約を入れる若い世代が急増している。