敬称に対する大衆意識の変化は、私たちが親しんできた映像作品のタイトルにも鮮やかに刻まれている。
1990年代に大ヒットし、現在もNetflixなどで愛され続ける名作コメディ映画『ミセス・ダウト』を思い出してほしい。ロビン・ウィリアムズ演じる主人公が元妻の家庭に入り込むために扮装した老家政婦は、「古き良き家庭的な既婚女性」のステレオタイプを体現する存在として「Mrs.」を冠していた。
対照的なのが、マーベル・スタジオが手がけDisney+で配信されたドラマシリーズ『ミズ・マーベル』だ。主人公の女子高生ヒーローであるカマラ・カーンが掲げる「Ms.」の称号には、伝統的な縛りを打ち破り、自分自身の力で未来を切り拓く新世代の力強いアイデンティティが込められている。時代を象徴する作品を見比べるだけでも、言葉が持つニュアンスの劇的な変化が浮き彫りになる。