『聲の形』川井みきはなぜ嫌われる?無自覚な自己正当化と結末の真相

『聲の形』川井みきはなぜ嫌われる?無自覚な自己正当化と結末の真相

『聲の形』川井みきはなぜ嫌われる?無自覚な自己正当化と結末の真相の具体的な内容に迫る! 専門的な視点で紐解きます。

作品に登場するキャラクターの中でも、とりわけ川井みきに向けられるヘイトの熱量は異様な突出を見せています。植野直花のように真正面から悪意をぶつける攻撃的なキャラクターよりも、川井のような「善人の顔をした保身者」に対して、読者はより強い生理的嫌悪を抱く傾向があります。

その最大の引き金となったのが、高校の教室において石田将也の過去のいじめをクラスメイトの前で大声で暴露した事件です。将也から自らの偽善的な態度を咎められた瞬間、彼女は逆上するのではなく、即座に涙を流して「被害者のポジション」を確保しました。「私、石田くんに酷いこと言われちゃった」「小学校の時、西宮さんをいじめてたんでしょ!?」と教室全体を巻き込み、自らに向けられた批判の矛先を鮮やかに将也へとすり替えたのです。

さらに読者の反感を決定づけたのが、原作第5巻および劇場版中盤で描かれた「橋の上のシーン」です。孤立を深める将也から「お前だって小学生の時、一緒になって笑ってただろ」「自分が一番可愛いだけだ」と核心を突かれた際、川井は反省の欠片も見せず、ヒステリックに泣き叫びながら自己の潔白のみを主張し続けました。ネット上では「何一つ自分の非を認めない姿勢が恐怖すら感じる」「現実の職場や学校にいる最も厄介なタイプ」といった痛烈な反応が後を絶ちません。

彼女の特異性は、計算づくで悪事を働いているのではなく、「自分は善意の塊であり、周囲のために尽くしている」と本気で思い込んでいる点にあります。悪意による加害よりも、善意を隠れ蓑にした無自覚な加害の方が、被害者にとってはるかに逃げ場を奪う暴力となることを、彼女のキャラクター造形は見事に体現しています。

吉田 誠
著者

吉田 誠

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