犬の便に異常を感じた際、まず見極めるべきは「それが本当に消化管出血によるタール便(メレナ)なのか」という点です。愛犬の排泄物を観察する際、獣医学的な観点から注視すべき識別ポイントは「色調」「粘度」「臭気」の3要素に集約されます。
本物のタール便は、アスファルトや海苔の佃煮のように光沢のある漆黒を呈し、水分を含んでゼリー状または泥状にドロッとしています。さらに特徴的なのがその臭いです。酸化した血液と壊死した組織が混ざり合うことで、通常の排便臭とは明らかに一線を画す「強い鉄錆(てつさび)臭」や「生臭い腐敗臭」を放ちます。
一方で、赤身肉を多く含むプレミアムフードや鉄分サプリメント、海藻類を摂取した際にも便が濃い焦げ茶や黒色になることがあります。しかし、これらはティッシュペーパーで押し広げると深緑や濃褐色であることが多く、形状もしっかりとした有形便で、血液特有の異臭は伴いません。
また、同じ消化管出血であっても、大腸や直腸、肛門付近など下部消化管からの出血は、胃酸による酸化を受けないため「鮮紅色〜暗赤色の血便(血便・血色便)」として排泄されます。黒いタール便はより口に近い胃や小腸上部での大量出血を意味しており、消化器官の深部でトラブルが起きている動かぬ証拠です。