化合物の誕生には、必ず化学変化(化学反応)が伴います。これに対し、混合物の形成は物理的な混合にすぎません。この違いを直感的に理解する鍵が、中学2年の理科で実験する「鉄と硫黄の化合」です。
鉄粉と硫黄の粉末をただ混ぜ合わせただけの状態(混合物)では、磁石を近づけると鉄だけが引き寄せられ、薄い塩酸を加えると鉄が反応して水素が発生します。硫黄の性質もそのまま残っています。しかし、この混合物を加熱して激しい熱と光を伴う化学変化を起こさせると、まったく新しい物質である「硫化鉄($FeS$)」という化合物に生まれ変わります。
化合物となった硫化鉄は、もはや磁石には引き寄せられず、塩酸を加えると卵が腐ったような特有の臭気を持つ「硫化水素」が発生します。元の鉄や硫黄が持っていた個々の性質は完全に失われ、原子同士が強く結合することで全く異なる性質を獲得するのです。一方で食塩水(混合物)は、水を蒸発させるという物理的な「状態変化・分離操作」を行うだけで、元の食塩と水に容易に戻すことができます。