酸素ヘモグロビン解離曲線の見方と右方移動の理由|国試・生物完全攻略

酸素ヘモグロビン解離曲線の見方と右方移動の理由|国試・生物完全攻略

酸素ヘモグロビン解離曲線の見方と右方移動の理由|国試・生物完全攻略の主要なニュースをコンパクトにまとめました。全体像を一目で把握できます。

テストや国試で最大の難所となるのが、基準となる曲線が右側や左側にシフトする現象です。なかでも頻出する「右方移動」について、単なる矢印の向きとして覚えていると、プレッシャーのかかる本番で必ず混乱を招きます。抑えるべき本質はただ一つ、「右方移動とは、ヘモグロビンの酸素親和性が低下し、組織へ酸素を手放しやすくなった状態」を意味します。

同じ酸素分圧で縦軸の数値を比較してみると理解が深まります。例えば組織の酸素分圧が40mmHgの地点において、標準状態で酸素飽和度が75%だったとします。曲線が右へシフトすると、40mmHgの地点での酸素飽和度は60%などに低下します。飽和度が下がったということは、それだけ多くの酸素がヘモグロビンから切り離され、組織へと放出されたことを意味します。

では、なぜ生体はそのような反応を示すのでしょうか。決定的な理由は、「激しくエネルギーを消費している筋肉や臓器を酸欠から救うため」です。運動中や代謝が亢進している組織の内部では、以下のような環境変化が起きています。

細胞呼吸が活発化すると大量の二酸化炭素(CO2)が排出され、局所の二酸化炭素分圧(PCO2)が急上昇します。CO2は水と反応して炭酸となり、水素イオン(H+)を放出するため、組織のpHは低下してアシドーシス(酸性側)へ傾きます。さらに、代謝熱によって局所の体温が上昇し、赤血球内の解糖系中間代謝産物である2,3-ビスホスホグリセリン酸(2,3-BPG)の産生も増加します。

水素イオンやCO2がヘモグロビンに結合すると、ヘモグロビンの構造が酸素を離しやすい「T(Tense)型構造」へと安定化します。この「二酸化炭素分圧の上昇やpHの低下に伴って酸素解離曲線が右方へ移動し、酸素親和性が低下する現象」を発見者の名にちなんでボーア効果(Bohr effect)と呼びます。体が必死に活動している部位へ自動的に酸素を優先配分する、人体の完璧なフィードバックシステムなのです。

反対に、「左方移動」はその真逆の環境で起こります。体温が低下し、アルカローシス(高pH・低CO2)状態になると、ヘモグロビンは酸素を離しにくくなります。また、母親の胎盤から酸素を効率よく奪い取る必要がある胎児ヘモグロビン(HbF)は、成人型ヘモグロビン(HbA)よりも酸素親和性が高いため、曲線は左側に位置しています。

前田 葵
著者

前田 葵

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。