厚生労働省の難病情報センターが公表しているデータによると、シェーグレン症候群の発症率は男女比でおよそ1対9から1対14と圧倒的に女性に偏衰しており、とりわけ40歳代から60歳代の中年期に好発します。なぜこれほど女性に集中するのかという問いに対し、免疫学の現場ではエストロゲンをはじめとする女性ホルモンの劇的な変動、X染色体に関連する遺伝的素因、さらには精神的・肉体的ストレスやウイルス感染が複雑に絡み合った結果であると分析されています。
多くの人が「ただの乾燥体質」と過小評価しがちですが、本疾患を未治療のまま長期間放置することには深刻な臨床的リスクが伴います。
1. 不可逆的な局所障害の連鎖
涙液の減少は角膜の表面を無防備にし、角膜びらんや角膜潰瘍を引き起こして視力低下を招きます。また、唾液には自浄作用や抗菌作用、再石灰化作用があるため、分泌が枯渇すると歯の根元から崩壊する多発性齲蝕(うしょく)や重症歯周病、口腔カンジダ症が短期間で進行します。
2. 全身の臓器病変(腺外病変)の進行
炎症は涙腺・唾液腺にとどまりません。間質性肺炎による慢性的な空咳や息切れ、尿細管性アシドーシスに伴う低カリウム血症や骨粗鬆症、末梢神経障害による手足のしびれ、さらには甲状腺機能低下症(橋本病)の合併など、全身の多臓器へ影響が波及します。
3. 悪性リンパ腫発症リスクの上昇
極めて注意を要する点として、慢性的なBリンパ球の過剰な刺激状態が続くため、一般人口と比較してMALTリンパ腫などの悪性リンパ腫を発症するリスクが統計的に有意に高いことが報告されています。だからこそ、単なる体質と片付けず、早期に確定診断を下して定期的な医学管理下に置くことが不可欠です。