クールベ『世界の起源』なぜ描かれた?封印されたモデルの正体と検閲の真相

クールベ『世界の起源』なぜ描かれた?封印されたモデルの正体と検閲の真相

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オルセー美術館の2階(フランス式1階)、クールベの巨大な代表作『オルナンの埋葬』や『画家のアトリエ』が並ぶ展示室を抜けた先に、『世界の起源』が収められた小部屋があります。世界各国から訪れる観光客でごった返す大フロアとは異なり、この絵の周囲には常に特異な緊張感が漂っています。

実際に現地を訪れると、多くの鑑賞者が作品の前で足を止め、ある者は気恥ずかしそうに目を背け、ある者は食い入るようにカンバスの絵の具の盛り上がりを見つめています。オルセー美術館の学芸スタッフによると、年間数十万人がこの小部屋を訪れますが、作品の前で沈黙が生まれる割合は館内でも随一です。

現地での現場観察から見えてくるのは、鑑賞者が試されているという事実です。顔がない肉体を見つめるとき、鑑賞者は「自分自身の視線」を意識せざるを得ません。卑猥なものを盗み見ているのか、それとも自らが生まれてきた根源と対面しているのか――。クールベがカンバスに仕掛けた心理的トラップは、160年の時を経た現在でも全く色褪せることなく機能しています。

清水 千尋
著者

清水 千尋

マーケティングと消費者心理のトレンドを分析し、現代のヒット商品の背景を読み解きます。