「他の大型コースターは平気なのに、ハリドリだけは耐えられない」と訴えるゲストは少なくありません。取材班がコースター工学および現場の運行データから分析したところ、ハリウッド・ドリーム・ザ・ライドの恐怖には、明確な工学的・心理学的トリガーが存在します。
第一の要因は、世界屈指のコースターメーカーであるボリガー&マビラード(Bolliger & Mabillard / B&M社)が設計した、極限まで無駄を削ぎ落としたライド構造にあります。肩をがっちりとホールドするハーネス(オーバーザショルダー)ではなく、太もも部分のみを固定する「ラップバー形式」を採用。さらに走行中は足が床から浮いた状態になる設計のため、乗客は「自らの上半身を支える支点がどこにもない」という強烈な身体的無防備感に晒されます。
第二の要因が、最高到達点約43メートルから落差50メートル以上を連続して駆け抜けるキャメルバック(ラクダのコブ形状のアップダウン)によって生み出される「連続エアタイム(浮遊感)」です。放物線を描いて頂点を通過する瞬間、乗客の身体には最大でマイナスG(上方向へと引き離される力)が作用します。内臓がフワリと浮き上がる独特の感覚は、人間が本来本能的に忌避する「自由落下」のシグナルであり、脳が「放り出される」と誤認することで猛烈なパニック反射を引き起こすのです。
では、この独特の浮遊感を克服するにはどうすればよいのでしょうか。絶叫マシンを克服したテスターやクルーへのヒアリングから導き出された実践的なテクニックは以下の3点です。
- 下腹部に力を入れ、息を吐きながら背もたれへ身体を預ける:恐怖で息を吸い込んで息を止めると、横隔膜が硬直して胃の浮遊感をダイレクトに知覚してしまいます。ドロップの瞬間に向けて「フーーッ」と息を細く長く吐き出すことで、腹圧が高まり内臓の揺動を抑えられます。
- かかとを座席手前のフットレスト側に強く押し付ける:足がブラブラした状態は脳の不安中枢を刺激します。つま先を下げず、かかとを意識的に後方へ踏ん張る感覚を持つだけで、骨盤がシートに固定され体幹が安定します。
- 視線を常に「レールの先」へ向ける:目を瞑ると平衡感覚を司る三半規管が狂い、Gの変化を数倍強く感じてしまいます。次にライドがどちらへ傾くのかを目視で予測し続けることが、脳のショックを最小限に防ぐ近道です。