SNSやネット掲示板では、代表チームが敗戦するたびに「采配ミスだ」「精神論ばかりで戦術がない」といった感情的な批判が飛び交いがちです。しかし、現場の実態を詳細に取材すると、ネット上の言説とプロの戦術論には大きなギャップがあることが分かります。
典型的な誤解の一つが、「日本のバレーは世界に比べてデータ活用が遅れている」という見方です。実際には、日本のアナリスト陣の能力は世界トップクラスであり、相手サーバーのコース配分からローテーションごとの決定率まで、秒単位で緻密なデータがベンチに供給されています。
問題の本質はデータの有無ではなく、「集めたデータをコート上で選手が瞬時に判断・体現できる組織設計ができているか」にあります。海外の強豪国は2メートル級の選手が高速で移動し、高さで上から叩き込む戦術を確立しています。それに対し、高さで劣る日本は「全員が連動してブロックとレシーブのコースを完璧に限定する」という、極めて難易度の高い連携を1試合通じて維持しなければなりません。このわずかなズレがネット上では「戦術がない」と誤認されがちですが、実態は極限状態での戦術遂行精度の問題なのです。