出流の豪快な盛り蕎麦と並び、栃木市を訪れたら絶対に外せないのが郷土食「にらそば」だ。隣接する鹿沼市発祥とされるこのメニューだが、実は栃木市内にも全国トップクラスのニラ生産量を誇る農家群が存在し、各店が独自の解釈を加えた絶品を提供している。
にらそばの神髄は、茹で上げたニラの鮮やかな翡翠色と、蕎麦の褐色が織りなす美しい色彩の対比にある。熱湯でサッと数秒間だけ湯通しされた県産ニラは、特有の青臭さが抜け、驚くほどの甘みとシャキシャキとした瑞々しい食感を放つ。冷たい蕎麦と一緒に手繰り寄せ、濃いめのつゆに浸して口へ運ぶと、蕎麦の持つルチンの香ばしさとニラの持つアリシンの香味が見事な調和をみせる。胃腸を活性化させる滋養強壮の知恵としても、理にかなった組み合わせと言える。
一方、より洗練された職人技を求める愛好家の間で注目を集めているのが、栃木市十割蕎麦評判を牽引する市街地の隠れ家名店だ。つなぎを一切使わない十割蕎麦は、粉の挽き方、加水量、室温の微小な変化によって仕上がりが激変する難易度の高い仕事である。蔵の街の路地裏に店を構える職人たちは、地元産「常陸秋そば」や日光水系の玄そばを低温管理し、その日の朝に石臼で自家製粉する。提供される十割蕎麦は、ザラリとした舌触りと共に芳醇な甘みが広がり、塩だけで手繰っても十分に成立するほどの完成度を誇る。