応為の画業における最大の特徴は、従来の浮世絵には見られなかった「徹底した光源の意識と光と影(キアロスクーロ)の表現」にあります。輪郭線と平塗りを基本とする日本の伝統的絵画空間に、提灯や行灯、月光がもたらす陰影を持ち込み、妖艶かつ神秘的なリアリズムを確立しました。
その真骨頂と評されるのが、代表作『吉原格子先之図』です。吉原遊郭の張見世(はりみせ)に並ぶ遊女たちと、格子越しに彼女らを品定めする客たちの姿が描かれていますが、提灯の光が当たる部分だけが鮮烈に浮かび上がり、光の届かない路地は深い闇へと沈んでいます。提灯に刻印された隠し落款(「応」「為」「栄」の文字)や、格子の影が遊女たちの着物に落ちる繊細な描写は、見る者を圧倒します。
また、『夜桜美人図』では夜空に瞬く無数の星々が白の点描で表現されており、西洋天文学の知識やレンズを通した光学的な視線が画面の隅々にまで行き渡っています。女性の手指の曲線や、着物の柄の立体感を際立たせる陰影処理など、従来の浮世絵美人画の様式美を超えた生々しい生命感が宿っています。