ネット上の簡易リメイク動画などでは「誰でも簡単にシャツが一回り小さくなる」といった表現が散見されますが、衣服構造学(アパレルパターンメイキング)の観点から見れば、明確な誤解と誇大表現が含まれています。シャツの構造において「絶対に自力で手を出すべきではない聖域」が存在します。
その境界線こそが「肩幅(ヨーク部分)」と「アームホール(アームホールの円周)」です。シャツの袖は、身頃の丸みと腕の立体的な可動域を考慮し、ミリ単位の緻密なカーブで設計されています。肩幅を詰めようとしてアームホールをハサミで切り詰めてしまうと、袖山(袖の頂点)の寸法と身頃の円周が一致しなくなり(「いせ込み」のバランス崩壊)、腕を前に上げることすら困難な服に成り下がります。
身幅や着丈、袖口の絞りは二次元的な調整が通用しますが、肩回りは三次元の彫刻的な設計が求められます。ネット上の「肩幅も直線縫いで縮む」という情報を鵜呑みにしてハサミを入れてしまうと、プロの仕立て屋であっても修復不能な状態に陥ります。セルフ補正を行う際は、「肩幅と襟回りが体型に合っているシャツ」だけをターゲットに選ぶことが、破綻を防ぐ鉄則です。