ノンフィクションの白眉である名著『殺人犯はそこにいる』において、著者の清水潔記者が辿り着いた最大のスクープ、それは「真犯人は今も現場周辺で普通に暮らしている」という戦慄の事実でした。
清水記者は、群馬・栃木の県境で起きた5つの幼女誘拐殺人事件において、犯行手口、遺棄場所、失踪した曜日(パチンコ店のイベント日や週末)、被害者の年齢層(4歳〜8歳の女児)の異様な共通性に着目しました。聞き込みを重ね、当時現場近辺のパチンコ店に出入りしていた常連客の行動パターンを徹底的にプロファイリングした結果、ある特定の男が捜査線上に浮かび上がったのです。
男の特徴は、長身で猫背、独特の歩き方をし、アニメのキャラクターに酷似していたことから関係者の間で「ルパン」という通称で呼ばれていました。清水記者は綿密な張り込みと行動確認を行い、男がパチンコ店で幼女に声をかける姿や、喫茶店でストローから採取したDNA検体をも独自に入手。専門機関による鑑定結果は、足利事件の被害女児の遺留品に残されていた犯人の型と極めて高い一致性を示していました。
民間の一記者である清水氏がここまで特定し、捜査機関に対して「殺人犯はそこにいる」と直接情報提供を行ったにもかかわらず、警察が男を逮捕することはありませんでした。真犯人を目の前にしながら法の手が届かないという不条理は、読者の誰もが背筋を凍らせる結末となっています。