球団トップとして長年タクトを振るう松田元オーナーの信念は一貫している。それは「他社の懐を頼りにせず、自らの稼ぎで強くなる」という身の丈に合った球団経営の徹底だ。プロ野球の世界では、親会社が数十億円規模の赤字を広告宣伝費として処理する手法が一般的だったが、カープにその選択肢はない。
この健全経営の思想は、チームの補強戦略にも色濃く反映されている。高額なFA選手の獲得競争に参入するのではなく、スカウト網を駆使して隠れた原石を発掘し、自前の練習施設で徹底的に鍛え上げる。「育てて勝つ」という育成主義は、資金力に限界がある独立経営ゆえの切実な生存戦略でもあった。
無駄なコストを削ぎ落とし、利益を次世代の設備投資やスカウティング費用へ循環させる。松田元オーナーが貫くこの哲学は、浮き沈みの激しいスポーツビジネスの世界において、極めて堅固なポートフォリオを構築することに成功している。