果てしない憎悪の連鎖を断ち切ったのは、1998年4月10日、聖金曜日に署名された歴史的なベルファスト合意(グッドフライデー合意)だった。対立するユニオニスト(英維持派)とナショナリスト(アイルランド統合派)が権力を分かち合う連立自治政府の樹立、住民投票による自決権の承認、そして南北アイルランド間の自由な往来が保障された。
和平への道のりは平坦ではなかった。互いに家族を殺された敵同士が同じテーブルに着き、武器の廃棄(武装解除)を確認し合う作業は、幾度も決裂の危機に瀕した。それでも、流血の日常に耐えかねた市井の人々の「もう暴力はいらない」という切実な祈りが、奇跡的な妥協を現実のものとしたのである。