未知子さんが生まれた1960年代初頭、ダウン症に関する医学的知見は現在と大きく異なっていました。当時、医師から告げられた言葉は「この子は20歳まで生きられないでしょう」という非情な宣告でした。心臓疾患の合併症などが多く、当時は乳幼児期や青年期に命を落とすケースが珍しくなかったためです。
しかし現代では、小児期における外科手術の進歩や感染症対策、地域医療の充実によって、ダウン症の寿命と高齢化は大きく様変わりしました。厚生労働省や関連支援団体の調査によると、現在のダウン症の方の平均寿命は60歳前後まで大幅に伸長しています。
ダウン症の当事者は40代から50代にかけて急激な体力の衰えや早期認知機能の低下を経験しやすいとされています。未知子さんが今なお元気で自活的な生活を維持できている背景には、医療の進化だけでなく、幼少期から培われた生活習慣と運動機能の維持があったことは間違いありません。