「尊重(そんちょう)」とは、相手の尊厳、意見、価値観、個性を大切なものとして扱い、軽んじないことを指します。漢字を分解すると、「尊(尊い・価値がある)」を「重(重んじる)」と書く通り、対象の価値を正当に認め、乱暴に扱わない姿勢を表します。
多くの人がつまずくのが、「尊敬」や「重視」とのニュアンスの差です。この3つの違いを曖昧にしたままコミュニケーションを取ると、相手への接し方に歪みが生じます。
まず、「尊重と尊敬の違い」です。尊敬は、相手の優れた実績、高い人格、能力などに対して「敬服する・憧れる」という感情を抱く行為です。つまり、相手に何らかの秀でた要素があるからこそ発生する上下関係や優劣のフィルターが含まれる場合があります。一方の尊重は、相手の能力や実績に関係なく、「一人の独立した人間としてその権利や意思を大切にする」というフラットな態度を指します。相手の意見に賛成できなくても、あるいは相手が年下であっても、尊重することは完全に成り立ちます。
次に、「尊重と重視の違い」についてです。重視は「特定の要素や方針を、他のものよりも重い位置づけにする」という優先順位の判断を指す言葉です。「安全性を重視する」「コストを重視する」といった客観的・戦略的な選択に使われます。対して尊重は、人格や権利、選択の自由といった倫理的・人間的な尊厳に向けられます。
なお、「尊重の対義語」には「軽視」「無視」「蹂躙(じゅうりん)」「否定」などが挙げられます。相手の意思を一顧だにせず切り捨てる態度は、まさに尊重の対極に位置します。また、「尊重の英語表現」としては「respect」が最も一般的ですが、文脈に応じて個人の権利を認める「value」、意向を汲み取る「honor」、配慮を示す「regard」などの表現が使い分けられます。