タイムリミットに直面した現代女性の間で広く認知されるようになったのが、血液検査で卵巣内の卵子の在庫目安を測る「AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査」です。しかし、ここにも致命的な落とし穴が潜んでいます。
AMH検査で判明するのは、あくまで卵巣に残っている「卵子の残数の目安(卵巣予備能)」であり、「卵子の質」を示す指標では決してありません。仮に41歳の女性が検査を受け、20代相当の極めて高いAMH値を示したとしても、その卵子の一つひとつは実年齢相応に染色体異常のリスクを抱えています。「AMHの数値が良いからまだ産める」という解釈は、医学的な完全な誤謬です。
一方、キャリア形成と出産時期のズレを埋める防衛策として普及が進んだ卵子凍結の費用と現在の利用実態にも、冷静な見極めが求められます。東京都など自治体による費用助成制度の導入により、20代後半から30代前半の未婚女性による採取希望は急増しました。しかし、卵子凍結は1回の採卵・凍結保存で30万〜50万円、さらに年間の保管料が数万〜十数万円単位で発生します。加えて、将来その凍結卵子を融解して顕微授精・胚移植を行っても、35歳以上で凍結した卵子から生児を獲得できる確率は決して100%ではなく、平均して20〜30%前後に留まるという厳しいエビデンスが存在します。
また、2022年の保険適用開始以降、大きな注目を集め続けている不妊治療の保険適用における年齢制限も厳然として立ちはだかっています。公的制度として認められているのは、「治療開始時の女性の年齢が43歳未満」という絶対条件です。回数制限も設けられており、40歳未満での治療開始は通算6回まで、40歳以上43歳未満での開始は通算3回までに限定されます。43歳を迎えた瞬間に全額自己負担の自由診療へと切り替わり、1回の採卵・移植サイクルで数十万円から百万円を超える経済的負担がダイレクトにのしかかることになります。