熊本県阿蘇市から大分県由布市を結ぶ「やまなみハイウェイ」は、日本のロードトリップの概念を決定づけた伝説的ドライブルートだ。標高1000メートルを超える瀬の本高原を疾走する車窓には、どこまでも続く牧草地と九重連山のシルエットが映画のスクロールのように流れていく。
かつてNHKのドキュメンタリー番組でも特集されたこの草原景観は、春の野焼き、夏の放牧、秋のススキ刈りという循環がなければ、瞬く間に藪へと還ってしまう脆弱な均衡の上に成り立っている。近年ではEV(電気自動車)による静音走行や、e-Bike(電動アシスト自転車)でのツーリズムが急速に浸透しつつある。エンジン音に遮られることなく、草原を渡る風の音とヒバリの鳴き声を聴きながら駆ける体験は、景観への没入感を劇的に変えた。
夕刻、飯田高原のパーキングエリアから見上げる夕焼け空。茜色に染まる稜線と、冷え込み始めた大気がフロントガラスをわずかに曇らせる。自然のスケールに圧倒される瞬間だ。