食卓でよく耳にする「カラトリー」という言葉は、結論から言えば英語の「cutlery(カトラリー)」が日本語の中で変化した表記揺れ・言い間違いです。辞書や公的な商品カタログ、専門書などにおける正式な日本語表記は「カトラリー」であり、「カラトリー」という独立した専門用語が存在するわけではありません。
語源を辿ると、中世フランス語で刃物職人や刃物類を指した「coutellerie(クテレリー)」に行き着きます。これが中英語を経て「cutlery」となり、本来は「刃物全般」を意味していました。そこから時代を経て、食卓用のナイフ、フォーク、スプーンを包括する言葉として定着した歴史があります。日本へ洋食文化が定着する過程で、ローマ字読みの感覚や「ト」と「ラ」の音位転換が起き、「カラトリー」という呼び方が一部で広まったと考えられています。
もうひとつ混同されやすいのが「食器」と「カトラリー」の境界線です。飲食に用いる道具の全体像を俯瞰すると、両者は明確な階層関係にあります。
広義の「食器(テーブルウェア)」は食卓で用いる道具全般を指す上位概念です。この中には、平皿やスープボウルといった陶磁器・ガラス器を指す「器(ディッシュ・プレート類)」、ワイングラスやタンブラーなどの「グラス類」、そして手で持って料理を切り分けたり口へ運んだりする「スプーン・フォーク・ナイフ」が含まれます。つまり、洋食器という大きな枠組みの中にカトラリーが位置づけられるという関係性が正確な構造です。