整形外科や理学療法の現場データによると、長時間のPC・スマホ作業による姿勢不良を訴える成人の約7割以上に、前鋸筋の機能低下や運動パターンのエラーが確認されています。肩こりを感じると僧帽筋や肩甲挙筋ばかりを揉みがちですが、根本的な問題は前鋸筋がサボることで肩甲骨が正しい位置を保てなくなっている点にあります。
前鋸筋の筋力が落ちると、肩甲骨が胸郭から浮き上がり、内側縁が背中側に羽のように飛び出る「翼状肩甲(よくじょうけんこう / スキャプラ・ウイング)」を引き起こします。これにより、肩関節が前内側に巻き込まれる「巻き肩」や猫背が定着し、首や背中の筋肉が常に引き伸ばされて緊張し続けるという負のスパイラルに陥ります。
さらに、前鋸筋は努力吸気筋(息を大きく吸うときに肋骨を引き上げる筋肉)としても機能します。デスクワークで前鋸筋が硬縮すると胸郭の広がりが制限され、「息苦しい」「深呼吸がしづらい」といった呼吸機能の低下や自律神経の乱れにも波及します。