日本各地で活躍する代表的な交通系ICカードキャラクターたちのプロフィールを整理すると、デザイナーの意図や各地域の独自性が浮かび上がってきます。
Suicaのペンギン(JR東日本)|名前がないという驚きの真実
2001年のSuicaデビューとともに誕生したのが、イラストレーター・絵本作家の坂崎千春(さかざきちはる)氏がデザインを手掛けたペンギンです。モデルとなったのは南極に生息するアデリーペンギン。ここで多くの人が驚く事実があります。実は彼には「スイッピー」などの固有の名前はなく、公式設定上の名称は「Suicaのペンギン」そのものです。特定の名前を付けないことで、利用者が自分自身の分身として投影しやすくする意図が込められています。
カモノハシのイコちゃん(JR西日本)|権利買い取りとコミカル路線の開拓
2003年登場のICOCAを牽引するのは、漫画家の夏野ひまわり氏がキャラクターデザインを手掛けた「カモノハシのイコちゃん」です。ICOCAの機能である「タッチして行こか」という関西弁のダジャレにくちばしの形状がカードに似ていることから抜擢されました。当初はキャンペーン用でしたが、絶大な人気を受け、報道記録によるとJR西日本がキャラクターに関する権利を正式に買い取った経緯があります。毒舌で食いしん坊、どこか哀愁漂うコメディリリーフ的な性格付けが、関西のみならず全国で熱狂的なファン層を築いています。
PASMOのロボット(PASMO協議会)|電車とバスに変身する頼れる相棒
首都圏の私鉄・地下鉄・バスが結束したPASMOのシンボルは、ピンク色の四角いボディが印象的な「PASMOのロボット」です。クリエイティブディレクションの現場では、移動の未来感を体現しつつ、急いでいるときでも安心感を与える丸みを帯びたフォルムが追求されました。普段はロボットの姿をしていますが、エコな移動をサポートするため、電車やバスにトランスフォームできるというユニークな裏設定を持っています。
Kitacaのエゾモモンガ(JR北海道)|北海道の自然を背負う愛され瞳
2008年導入のJR北海道「Kitaca」に描かれているのは、絵本作家の秦好史氏がデザインした北海道固有種のエゾモモンガです。つぶらな黒い瞳と愛嬌あるポーズ、そしてカードを両手で掲げる姿が「癒やされる」と全国の収集家の間で瞬く間に話題となりました。厳しい北の大地を軽やかに滑空するイメージが、スピーディーな改札通過の利便性と見事に合致しています。
地域色豊かな個性派たち(TOICA・SUGOCA・manaca)
JR東海の「TOICA」には、シンプルながら記憶に残る黄色い「ひよこ」のペアが起用されています。また、JR九州の「SUGOCA」には、人気デザイン集団アランジアロンゾが手掛けた「カエルくん」(親友の時計回りのカタツムリ「時計くん」が相棒)が配置され、「スッと行けて、スゴくカエれる」利便性をユーモラスに表現しています。さらに、名古屋圏の「manaca」には、日本のカード界では珍しい未確認生命体である「黄色い妖精」が描かれ、丸い体で街と人を繋ぐ架け橋としての世界観を形成しています。