『鳳仙花』の制作陣には、昭和歌謡界の巨匠たちが名を連ねています。作詞を手がけた吉岡治と、島倉の恩師であり数々のヒット曲を生み出してきた作曲の市川昭介の黄金タッグです。ふたりは、借金に苦しみながらも気丈に振る舞う島倉の過酷な現実を痛いほど理解していました。
吉岡治が紡いだ『鳳仙花』の歌詞は、単なる男女の別れ歌にとどまりません。注目すべきは、植物としての鳳仙花が持つ特性と花言葉です。鳳仙花は、種が熟すと果実が勢いよく弾け飛ぶ性質を持っています。その花言葉には「私に触れないで」「短気」といった拒絶の意味がある一方で、「切実な愛」や「不屈の生命力」の象徴としても知られています。
「咲いて はじけて 飛んでゆけ」という印象的なフレーズには、世間の冷たい風に晒され、理不尽な裏切りに傷つきながらも、自らの力で種を飛ばし再び芽吹いてみせるという、島倉千代子の剥き出しの覚悟が重ね合わされています。市川昭介が付けた哀愁に満ちたメロディは、彼女特有のビブラートと高音の泣き節を極限まで引き出し、聴く者の胸を強く締め付ける名曲へと昇華させました。