キャリアの初期において、父・野田英樹氏の名が付いて回ったことは否定できない。しかし、現在のモータースポーツファンやメディアで「元F1ドライバーの娘」というフレーズをメインに据える者は誰もいない。
レース中の通信トランシーバーから聞こえる彼女の声は至って静かだ。ピットとのやり取りは極めて簡潔で、エンジニアに対するフィードバックの正確さはチーム内でも高く評価されている。「アンダーステアが出る」という大雑把な報告ではなく、「中速コーナーの進入時、フロントの応答性が0.1秒遅れる」といった精密なテレメトリデータの答え合わせのような会話が交わされる。
自らの腕一本で掴み取ったチームからの絶大な信頼。それが、現在の彼女の躍進を支える太い骨幹となっている。