伊勢神宮を訪れる際、最も多くの人が疑問を抱くのが「外宮と内宮、どちらから先に参拝すべきなのか」という点です。結論から申し上げると、「外宮(げくう)先拝」が神宮の絶対的な古例であり、外宮から内宮の順で参拝するのが正しい作法です。
神宮の公式見解および神道儀礼の記録によると、外宮にお祀りされている「豊受大御神(とようけのおおみかみ)」は、内宮の主祭神である「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」のお食事を司る御饌都神(みけつかみ)であり、衣食住をはじめあらゆる産業の守り神です。神事においても、天照大御神に神饌(神へのお供え物)を捧げる儀式が先に行われることから、参拝者もまず外宮へ赴き、日々の恵みに感謝を捧げてから内宮へ向かうのが習わしとなっています。
内宮のみを参拝して外宮を省略することは、古くから「片参り」と呼ばれ、忌避されてきました。「時間が足りないから内宮とおかげ横丁だけで済ませる」という行動は、伊勢信仰の真髄を味わう機会を自ら手放してしまうことに他なりません。
さらに本格的な参拝を志す旅行者の間で定着しているのが、伊勢市二見町に鎮座する「二見興玉神社(ふたみおきたまじんじゃ)」から旅を始めるルートです。かつてのお伊勢参りでは、神宮へ参る前に二見浦の海水で心身の穢れを落とす「浜参宮(はまさんぐう)」という禊(みそぎ)を行うのが正式な手順でした。夫婦岩で名高い二見興玉神社を1日目の午前中に訪れ、無垢塩草(むくしおくさ)でお祓いを受けてから外宮へ向かうことで、心洗われる完璧なお伊勢参りが完結します。