「賃貸の壁に画鋲を刺してはいけない」という思い込みは、日本の賃貸市場において最も広く浸透している誤解の1つです。賃貸住宅の退去時トラブルを防止するために策定された国土交通省原状回復ガイドラインには、壁の画鋲穴について極めて明確な判断基準が記されています。
同ガイドラインにおいて、借主が負う賃貸原状回復義務と通常損耗の区分は次のように定義されています。通常の生活を営むうえで生じる摩耗や経年劣化、すなわち「通常損耗(通常の使用による損耗等の修繕)」にかかる費用は毎月の家賃に含まれているとみなされ、原則として貸主(大家・オーナー)が修繕費用を負担することになっています。
具体的には、カレンダーやポスターを留めるために壁紙へ刺した標準的な画鋲や押しピンの小さな穴は、日常生活の範囲内である「通常損耗」に該当します。そのため、退去時に壁紙の全面張替え費用を請求されたとしても、借主側が一律で支払う義務はありません。不動産管理会社の現場研修や大手賃貸ポータル(SUUMOやLIFULL HOME'Sなど)の公式解説でも、画鋲の使用自体を一律に違反行為とはみなさない姿勢が広く定着しています。