出撃したものの目的地に到達できず生還した特攻隊員を待っていたのは、温かい出迎えではなかった。大日本帝国陸軍が福岡の地に極秘裏に設置した施設「振武寮(しんぶりょう)」である。
ここに集められた帰還兵たちは、外部との連絡を一切遮断された。軍関係者から「なぜ死んでこなかった」「国賊」と怒号を浴びせられ、反省文の執筆や軍人勅諭の丸暗記を強要されるという、熾烈な精神的拷問を受けた。軍の面目を保つため、生き残りの存在そのものを隠蔽しようとした組織の暗部。振武寮は、生きて帰った若者たちの尊厳を徹底的に打ち砕くための容赦なき施設であった。