無限城編の第143話「怒り」において、上弦の弐・童磨に捕らえられた胡蝶しのぶは、肺と鎖骨を破壊され、もはや声を出すことすらできない状態に追い込まれていました。そこに駆けつけた継子・栗花落カナヲが怒りのあまり童磨へ突撃しようとした瞬間、しのぶは童磨の背後から左手の指を微かに動かし、特定の合図(指文字)を送ります。
このサインに込められた意味は、主に「焦るな」「息を吸い込むな」「毒が効くまで耐えろ」という極めて冷静かつ戦略的な指示です。童磨が放つ血鬼術は、自身の凍結した血を霧状に散布し、吸い込んだ者の肺胞を壊死させる極めて厄介な性質を持っています。しのぶは自らの命が潰える間際にあっても、カナヲが無謀に飛び込んで冷気を吸い込み、即死することを防ごうとしたのです。
同時に、この合図は「計画通り自分を喰わせるため、手を出さずに見届けろ」という過酷な実行合図でもありました。声を発せられない状況下で最小限の指の動きのみを用いて意思疎通を図るこの描写は、しのぶの並外れた精神力と、二人の間に築かれていた絶対的な師弟の絆を如実に物語っています。