絵画館に向かって地勢が緩やかに低くなる傾斜を完璧に計算し、手前に背の高い木、奥に進むにつれて低い木を配置する——。明治神宮外苑のイチョウ並木には、明治から大正にかけて活躍した造園技師・折下吉延が施した「通景線(ビスタ)」の高度な技巧が息づいている。青山通りの入口に足を踏み入れた瞬間、実際の距離以上の遠近感と立体感が視界全体を包み込む。植栽から100年以上の時を経た今もなお、並木の美しいシルエットが保たれているのは、熟練の職人たちによる定期的かつ精密な剪定作業の賜物だ。
明治天皇と昭憲皇太后の徳を後世に伝えるべく造成されたこの空間は、近代日本における造園・都市計画の最高峰と言っても過言ではない。単に美しい樹木を並べるにとどまらず、景観の終点に立つ西洋風建築・聖徳記念絵画館と完璧に響き合うよう緻密に設計された。晩秋の日差しを浴びて透き通る黄金色の葉と、地面に伸びる影の対比。それは人工と自然が奇跡的なバランスで融合した、首都東京の誇るべき景観美である。