競べ弓の進行手順と勝敗の判定には、儀礼空間ならではの極めて厳格な作法が定められていました。基本的には、近衛府の武官や選抜された貴族が「左方(さほう)」と「右方(うほう)」の2チームに分かれて対戦します。
試合形式は、左右から1名ずつ射手が前へ進み出てペア(番=つがい)となり、交互に矢を放つスタイルです。射手1人につき2筋(計4本)の矢を射ることが多く、的までの距離はおよそ十八間(約33メートル)程度が標準とされました。的の中心近くに命中した本数(中り数)を記録係が厳密にカウントし、最終的なチーム全体の総的中数で勝敗を決します。
特筆すべきは、勝敗が決した後の儀礼的なコントラストです。勝利した側には天皇や貴族から豪華な禄(布帛や馬、調度品などの恩賞)が下され、勝ち鬨(かちどき)をあげて舞を舞う「乱舞(らんぶ)」が許されました。一方、敗北した側には「罰杯」として大盃になみなみと注がれた酒を飲み干す屈辱が課されるなど、エンターテインメント性と心理的圧迫が同居した独特の空気が醸成されていたのです。