日航亭大湯の歴史を語る上で欠かせないのが、江戸幕府を開いた徳川家康との深甚な関わりです。慶長9年(1604年)、家康は熱海の湯に7日間逗留して英気を養い、その後も大湯の源泉を樽に詰めて江戸城まで運ばせる「御汲湯(おくみゆ)」を命じました。この史実から、同所は歴代将軍や諸大名に愛された「出世の湯」として名を轟かせるようになります。
施設の庭園には、家康が湯上がりに腰掛けたと伝わる「出世の腰掛石」が鎮座し、歴史ロマンに触れられるパワースポットとしても親しまれていました。また、すぐ目と鼻の先には熱海七湯の筆頭である「大湯間欠泉」が位置し、古くから熱海温泉の中心地(へそ)として機能してきた土地柄です。
浴場に注がれていた湯は、熱海特有の濃厚な塩化物泉。舐めると強い塩味とほのかな苦味があり、湯上がりの肌をしっとりと包み込む抜群の保温力を誇っていました。「一度浸かれば数時間は体が冷えない」と評された圧倒的な湯力こそが、日航亭大湯の看板でした。