昭和の怪人として一世を風靡したくしゃおじさんですが、その素顔は決してプロのお笑い芸人や舞台俳優としてスタートした人物ではありませんでした。彼の本名は仁保重夫(にほ・しげお)氏。1906年(明治39年)生まれの一般市民であり、もともとは民間企業に勤める実直なサラリーマンでした。
彼がテレビ界に見出されたのは、すでに定年退職を迎えていた60代後半のことです。1970年代前半、フジテレビ系のバラエティ番組『コント55号のやるぞみてみろ!』の素人参加型コーナーに出演したことがすべての始まりでした。司会の萩本欽一氏や坂上二郎氏が絶句するほどのインパクトを放ち、視聴者からの問い合わせが殺到。瞬く間に「昭和の有名人」として全国区の知名度を獲得することになります。
当時の芸能関係者の証言や手記によると、仁保氏は普段は物静かで礼儀正しく、紳士的な振る舞いを崩さない人物でした。しかし、ひとたびカメラが回り合図がかかると、誰もが息をのむ異次元の表情を作り出すプロフェッショナルな集中力を発揮し、スタッフや共演者を圧倒していたと伝えられています。