激痛のあまり、「ロキソニンを飲んだ直後にイブを追加する」「風邪薬と一緒に一気に流し込む」といった無謀な行動に出る患者が後を絶ちません。しかし、歯痛の鎮痛剤の正しい飲み合わせと注意点を逸脱した過剰摂取は、痛みを止めるどころか消化管出血や急性腎障害といった致死的な事態を招きます。
ロキソプロフェンやイブプロフェンなどのNSAIDsは、胃粘膜を保護するプロスタグランジンも同時に抑制してしまいます。異なる市販薬であっても同系統の成分を多重服用すれば、胃壁がただれて吐血・下血に至る危険性が急上昇します。また、市販の総合感冒薬にはすでにアセトアミノフェンやイブプロフェンが含まれていることが多く、鎮痛薬との重複には最大の警戒を払わなければなりません。次の服用までは最低でも4〜6時間の間隔を空けることが鉄則です。
社会的・心理的な背景に目を向けると、日本人の歯科受診忌避には「治療費への懸念」や「削られることへの恐怖心」、そして「痛みを我慢することを美徳とする忍耐文化」が深く影を落としています。しかし、歯の硬組織は一度崩壊すれば自己修復することは決してありません。市販薬の役割は「治癒」ではなく、単なる「受診までの時間稼ぎ」に過ぎないという冷徹な事実を直視する必要があります。
【プロの結論】市販鎮痛薬の選択基準:おすすめできる人・慎重になるべき人
▼ ロキソプロフェン製剤(ロキソニンS等)が向いている人
・とにかく今すぐ激痛を断ち切りたい成人(15歳以上)
・過去に胃潰瘍や重いアレルギーを起こしたことがない人
・日中の開局時間帯に薬局・ドラッグストアで薬剤師から購入できる環境にある人
▼ イブプロフェン高用量製剤(イブDX・バファリンプレミアムEX等)が向いている人
・夜間ドラッグストアで確実に入手したい人
・歯茎の腫れや親知らず周囲の炎症など、持続的な消炎鎮痛を必要としている人
・ロキソニン単剤では胃部不快感が出やすく、胃保護成分との複合剤を望む人
▼ カロナール系(タイレノールA等)を選ぶべき・慎重になるべき人
・妊娠中、授乳中、または15歳未満の小児
・アスピリン喘息の既往がある人や、胃腸が極めて弱くNSAIDsの服用を医師から止められている人
・痛みの程度が初期段階であり、穏やかな効き目を求めている人