スイスで死を迎える選択には、周到な準備と相応の経済的負担が不可欠だ。2018年、104歳で自らの意思によりスイスで命を絶ったオーストラリアの植物学者デヴィッド・グッドール博士の事例は、世界中に鮮烈な問いを投げかけた。彼は致死的な病気を抱えていたわけではなく、加齢による身体機能の低下と生活の質の損失を理由に選択を行ったからだ。
日本を含む海外からの渡航者が利用する場合、団体の年会費、複数回の診察費、薬効手配、遺体火葬や行政手続きの代行代などを含め、合計で概ね1万〜1万5000スイスフラン(日本円で約170万〜250万円以上)の費用が発生する。渡航費や家族の滞在費を考慮すれば、決して容易な金額ではない。手続きの条件としても、自責能力(判断能力)の証明と自らの手で投与装置を操作できる身体能力が厳格に求められる。