昭和の高度経済成長期、街の角々には怪しげな熱気を放つ映画館が存在していた。娯楽に飢えた人々が立ち見を辞さずに押し寄せ、館内は熱気と煙草の煙で充満していた。あれから半世紀以上の時が流れた2026年現在、成人映画館の数は激減した。しかし、廃業の危機を乗り越えて生き残る劇場には、独自のサバイバル戦略が存在する。
都内のある旧式劇場を訪ねると、そこには意外な光景が広がっていた。かつての男性単身客ばかりの客席に、20代の若者や海外からの映画ファンの姿が混じっているのだ。館主は語る。「配信では味わえない、35ミリフィルムの粒子感や、暗闇で他者と空間を共有する体験を求めて来館する人が増えた。うちは『昭和レトロなシネマテーク』としての価値を再定義した」。名作の3本立て興行やトークイベントの開催など、デジタル配信に打って変わる「場」としての体験価値を研ぎ澄ますことこそが、生き残りの最大の秘訣なのだ。