あの日の夕刻、面会室で弁護士との接見が終わった後、署員は室内を確認しなかった。この初歩的な確認ミスが、前代未聞の大逃亡劇の引き金となる。富田林警察署の杜撰な管理体制と防犯設備の死角を、彼は見逃さなかった。アクリル板の隙間を押し広げ、静かに外部へと抜け出した手口は、警察行政に対する激しい批判を巻き起こした。
発覚の遅れが致命的だった。逃走から通報まで数時間の空白が生じたことで、大阪府警察は初動捜査で完全に後手に回る。近隣住民には警察官が戸別訪問で警戒を呼びかけ、学校の登下校時には厳重な警戒姿勢が敷かれた。しかし、捜査網が大阪府内に集中する中で、容疑者はすでに遠く離れた地へと足を伸ばしていたのである。