日本中を熱狂させた歴代の名キャラクターたちも、順風満帆なスタートばかりではありませんでした。むしろ、窮地を脱するための奇策や、偶然のスケッチから生まれたドラマがファンの愛着を深めています。
地方自治体の枠を越えて社会現象となった『ご当地ゆるキャラ』の歴史において、くまモン(熊本県)の仕掛けは今なお語り草です。当初は九州新幹線の全線開業に向けたPRの一環として誕生しましたが、デザイナーの水野学氏とプロデューサーの小山薫堂氏が掲げた「ロイヤリティフリー(著作権使用料の無償化)」という大胆な戦略が功を奏し、瞬く間に全国の売り場へ浸透しました。
また、『ゆるキャラグランプリ』の歴代王者たちを見ても、彦根城築城400年祭を救ったひこにゃんや、愛媛県今治市の造船・タオル産業を背負ったバリィさん、栃木県佐野市のラーメン椀をかぶったさのまるなど、地域のアイデンティティと愛嬌が絶妙に融合した瞬間に奇跡的な熱狂が生まれています。
落書き同然のメモ用紙から生まれた初期スケッチが、制作者の泥臭い情熱とファンの草の根的な応援によって国民的アイコンへと育っていくプロセスそのものが、マスコットの持つ最も力強いストーリーです。