大相撲の世界において、相撲部屋の女将は「給料のない最も過酷な重職」と言われます。高田みづえが嫁いだ松ヶ根部屋(のちに二所ノ関部屋)も例外ではありませんでした。
毎日の買い出しでは数十キロ単位の食材を調達し、弟子たちの栄養バランスと体重増加を考え抜いた献立を作成。さらに、思春期で親元を離れて入座した弟子たちのホームシックや人間関係の悩みに耳を傾け、時には厳しく、時には母親のように温かく包み込みました。
相撲界関係者によると、高田みづえの女将としての評価は角界内でも極めて高いものでした。元トップアイドルという過去を一切鼻にかけず、誰よりも早く起きて雑務をこなし、本場所中は贔屓筋や後援会関係者への丁寧な挨拶回りを徹底。「みづえさんが女将さんだったからこそ、厳しい稽古にも耐えられた」と語る元力士は少なくありません。
伝統と格式が支配する閉鎖的な相撲界において、外の世界から飛び込んだ彼女がこれほどまでに弟子や相撲ファンから尊敬を集めた理由は、打算のない誠実さと人間力にありました。